天網恢恢疎にして漏らさず

天網恢恢疎にして漏らさず

お笑いライブ、博物館、クラシック中心の演奏会他、色々お出かけ記録用。

青春18きっぷで瀬戸内旅行〈岡山~倉敷~尾道その1〉

単身赴任中の父の元へ遊びに行く為に、以前から気になっていた青春18きっぷを利用してプラプラ旅行してきました。

 

ゴールは日曜日の朝に今治駅

ついでに尾道も経由しようと計画を立てます。こちらは聖地巡礼

私の大好きな作家森見登美彦さんの著書に登場します。

『夜行』の第一章は尾道が舞台のお話。

有頂天家族 二代目の帰朝』では主人公・矢三郎(京都の狸)のお兄さん矢二郎(京都の蛙…じゃなくて狸)が旅の途中で立ち寄った場として書かれています。

また、最近小学館の漫画アプリで読んでハマった鎌谷悠希さん『しまなみ誰そ彼』の舞台もこれまた尾道。これは行くしかない!

 

ざっくりとした予定で、いざ出発です!

 

1日目

木曜日、最寄りの駅を10時に出発して大阪方面へ向かいます。大阪駅で姫路行き新快速に乗り換え、13時頃に姫路駅で一度下車。

駅構内で名物まねきのえきそばを食べました。

和風の出汁に中華そばが入ったもの。やさしいお味。
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駅の正面から姫路城が見えましたが、時間も無いので今回はここからの景色のみ。
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 出発する前日まで暖かい日が続いていたので軽装で出てきてしまったものの、思いの外寒いこの日。駅ビルの雑貨屋でストールを購入して首に巻き付けて、再び電車に乗り込み西へ向かいます。

いわゆる相生ダッシュも問題なくこなし、山陽本線吉永駅へ。
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電車で神戸以西に行くのは初めてだったけれど、車窓から見える田舎の景色や無人駅は見慣れた感じ(笑)遠くまで来たとはいえ地元と同じような気候だし、3、4時間離れたぐらいじゃあそれほど風景は変わらないですね。

駅前からバスで15分・100円で最初の目的地へ!


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一般的な知名度としてはどうなんだろう?

岡山県備前市【旧閑谷学校
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私の愛読書に『日本建築集中講義』という建築史家・建築家の藤森さんと画家の山口さんの愉快な本がありまして、タイトルの通り様々な日本建築が紹介されている中に閑谷学校がありました。山口さんが「吸い込まれそう」と表現していた講堂の吹き漆の光る床を見たくて、遠路はるばるやってきました。

 

江戸時代に庶民の為に建てられた学校で、赤褐色の備前焼の瓦が特徴の講堂は国宝指定されています。
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私の下手くそな写真でちゃんと伝わりませんが、拭き漆の床が外からの光を優しく反射して美しい。講堂の中に入ることは出来ないのですが、廊下にいても自然と正座をしてしまう雰囲気です。
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かまぼこ型の石塀がぐるっと土地を囲んでいます。

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閑谷神社の瓦には蝶の紋様

 

平日の昼間。桜の見頃も過ぎているので人も少なく、ゆっくりとまわれました。

滞在時間は1時間半くらい。

 

17時頃のバスで吉永駅に戻り、西へ進みます。 

 


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晴れの国岡山の曇り空で、初日は終了。

岡山駅前から路面電車に乗り数駅、商店街にあるゲストハウスに宿泊。

バスでも行けたようだけど、路面電車が珍しいので乗りたかっただけです。

 

夕食はゲストハウスに併設しているカフェのお弁当で済ませました。ルーロー飯というやつ。角切りの豚肉の上に乗っていたの緑の葉っぱはパクチー?味見はしたけど結局ほとんど避けて食べました。

(書いていて思い出したけど、確か岡山はパクチーの生産地でしたよね、たぶん。)

 

2日目

この日は美術館ハシゴの旅

チェックアウト後に荷物だけ引き続き預かってもらい、徒歩で20分位。開館の9時ピッタリに到着。

 

1ヶ所目夢二郷土美術館
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可愛らしい建物。もしかして結構小さい?入館料高いなぁと受付で料金を支払いながら思いましたが、結果から言うと行って良かったです。

夢二の作品これまでにも他の美術館などで見たことはありましたが、同じ作者の作品を一度たくさん見れるというのは面白いです。

夢二といえば美人画だけど個人的にこの日一番グッと来たのは少年の絵。顔を腕で隠しているような姿なのですが、実に色気がありました。帰りにミュージアムショップでポストカードを探したのですが、こちらの絵は販売されていなくて残念…。

 

最後にお庭番「黑の助」さんにご挨拶して帰りました。

美しい黒の毛並みと黄色いお目目が素敵な猫さんなのですが、目を開いているところを撮らせてもらえませんでした。
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カワイイ。

 

2ヶ所目岡山市立オリエント美術館】

夢二郷土美術館から徒歩で15分位。古代オリエントの専門美術館です。さすが公立館、良心的な入館料です。

一応学生のときに西アジアの勉強をしていたので、やはりこちらは外せません。

展示の合間合間に、日本と西アジア地域の年表と地図を置いてくれていたのはとても助かりました。各国の興亡や位置や名前、時代関係がややこしいのです…。

私が一番好きなイスラーム美術品はラスター彩と呼ばれる、金色に光輝くような文様が美しい陶器。もちろんたくさんありました。この輝きは写真じゃわからないので是非実物を見て欲しいです。

 

次の目的地は路面電車に乗り、終点の東山駅へ。

 

 

番外編「おかでんミュージアム
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サービス精神豊富な館長見習い「美宇」さんがお出迎えしてくれます。

SUNたまちゃんがいると思っていたのですが、彼女は今はどこにいるのでしょう…?
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子供部屋のような可愛いデザインの建物。正直、大人1人で行く場所では無かったかな、と思いましたが、美宇さんが可愛かったので良しとしましょう。

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整備中の電車を見ることができるスペースがあります。
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たまちゃんがたくさんいました。

 

宿で預かってもらっていた荷物を回収し、近くのパン屋でランチ。そして食後のデザートにフルーツパフェの食べられる店を探します。観光案内所に置かれていた冊子なんかを見ていると、どうやら岡山市はフルーツパフェを推しているようです。雨が降ってきていて濡れたくないので、とりあえず一番近いお店へ。
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見た目以上に苺がたっぷり入ったパフェ。美味しかったです。

美味しいご飯で元気になってから、岡山駅から倉敷駅へ向かいます。

 

 

3ヶ所目大原美術館

倉敷駅から美観地区を目指して歩き、ハシゴの旅の最後の館へ。

 

雨の大原美術館本館。
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何度も写真で見た重厚な外観に、入館する前からテンションが上がります!
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大原美術館といえばエル・グレコ《受胎告知》。美術館に来てから「そういや今、貸出してないか…?」と不安になったのですが、ちゃんと2階に展示されていました。よかった。

2階に上がって1つ目の広い展示室を見た後に少し廊下を歩き、照明が落とされた部屋へたどり着くと《受胎告知》がどーんと視界に飛び込んできました。

第一印象は「思ってたより小さい」。美術鑑賞あるある。そして絵の真ん中あたりに書かれた白鳩(精霊を表す)を見て「父さん!」と心で声に出してしまったのは『聖☆おにいさん』の影響ですね。

 さて展示の話に戻りまして、スポットライトに照らされた《受胎告知》の背景の壁は青色。聖母マリアのまとうマントの色からですかね。1点のみが展示された贅沢な展示室です。絵の前にベンチが置かれていたので、座って見たり近くに寄って見たりして、ゆっくり鑑賞。

絵が掛かっているのとは違う方の壁に作品の来歴や解説のパネルがありました。絵を見るときの視界には入らない位置です。インパクトのある作品に合わせて考えられた展示、こういうの大好き。

もう一つ、特に気になったのがフレデリック《万有は死に帰す、されど神の愛は万有をして蘇らしめん》です。タイトルが長くて覚えられません。7枚の絵が横1列に並べられたこの作品は《受胎告知》とは真逆の「とにかく大きい」という印象。とても力強い作品で、しっかり目に焼き付けてきました。また、この作品の横幅で美術館の横幅を決めたそうです。箱が先行じゃないんですよ、いいねいいね!

 

特に美術を専門に勉強したことのない私でもわかるぐらい、最高の作品ばかりが集められた美術館でした。コレクションの収集をした画家児島虎次郎の審美眼、それを支援した大原孫三郎の仕事があったからこそ、現在素晴らしい作品の数々に身近に触れることが出来る。ほんとありがとうございますとしか言いようがないです。本物を見るのは大切だと再確認。

今回音声ガイドを借りなかったのはほんとに失敗。普段はそこまで西洋絵画は興味無いのですが、この日は気になる作品ばかりで、館内ベンチにおいてくれている図録の解説をちょくちょく読みながら進んで行きました。
 途中駆け足になったけど分館、工芸館、東洋館、ミュージアムショップとすべての館をまわって滞在時間2時間半位。絶対にまた来ます。

 

雨が降っているし、お店の中に入っても背中に背負った大きなザックで身動きが取りにくいしで、美術館を出た後は美観地区をさっと歩いて倉敷駅へ。
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夕方の車内は割と混雑していましたが、座れてよかった。

 

 

2日目のゴール、尾道駅
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なんだか駅周辺がごちゃごちゃしてると思ったら、駅の改装中だったようです。
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ちょうど日が暮れて、オレンジ色の街灯がいい感じの景色になってきていましたが、まずは重い荷物を置くために、予約しておいた宿に向かいます。雨が降り続いていたけど、商店街のアーケードに入ると一安心。駅からずんずん歩いてこちらのゲストハウスへ。
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細ながーい通路の奥に、宿の入口がありました。手前はカフェ。
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チェックイン後、お好み焼き屋を探して夜の尾道へ繰り出します。

鶏の砂ずりとイカのフライがポイントの尾道焼きをいただきました。お腹空きすぎて写真はナシ。砂ずりってあんまり食べたことが無かったけど、コリコリした食感で美味しかったです。

 

宿に戻り、風呂に入って洗濯して後は寝るだけ…と思っていたところで、宿の方から「今からオープンの古い病院を改装した古本屋があるよ」と教えてもらいます。この時点で23時です。えらい遅くに開くお店。もう眠かったので翌日の土曜日行こうと思ったのですが、土日は昼間しか開けていないとのこと。せっかくならちょっと変わった深夜開店のときに行きたいと思い、寝巻きから着替えて古本屋へ。

 

ストーブがついてぬくぬくとした空間で、旅先で深夜に本を探す非日常感にワクワクします。遠くから何度も聞こえる、貨物列車が通る音に『夜行』の世界を思い出しました。ゆっくり見ていたらもう2時過ぎになっていたので、2冊本を購入して宿へ戻りました。
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新書にはシャレオツなブックカバーを掛けてくれました。とても雰囲気の良いお店でしたので、本がお好きな方は是非行ってみて欲しいです。


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丑三つ時の尾道

 

3日目へ続きます~。